紀伊半島の環境保と地域持続性ネットワーク 紀伊・環境保全&持続性研究所(三重県津市)
連絡先:kiikankyo@zc.ztv.ne.jp 
ホーム メールマガジン リンク集 サイトマップ 更新情報 研究所

  <紀伊半島の巨木を訪ねる>

 三重県御浜町引作のクスの巨木

 三重県御浜町引作のクスの巨木は樹齢約1500年で、その幹回りの太さに圧倒される。根元の高校生の大きさと比較すると、その太さが分かる。思わず、屋久島の縄文杉(このクスの木よりも幹回りが約1m太い)(HP:「樹々山坊」)を想像してしまう。 また、宮崎駿監督のアニメ「となりのトトロ」に出てくる巨木を思い出す。

 紀伊半島にはクスの大木が多いが、平成元年
環境省全国巨樹調査で、この木は三重県随一の巨木とされた。また、平成2年には「新日本名木百選」に選ばれている。紀伊半島で最大のクスであるとも言われている。

 紀伊半島の温暖で多雨の気候がこのような巨木を育てたのだろう。

 この巨木の保全には、
南方熊楠がかかわっている。かつて、明治44年に伐採されそうになったが、南方が柳田国男に至急便を出し、柳田の尽力により伐採を免れたと伝えられている。
 

 新聞報道によれば、
2007年9月29日に、根元から4.4mの高さのところで5本に枝分かれしている主枝の1本が幹部から折れた。折れた幹の部分は腐食が進み空洞化していたという。写真1で見ると、折れたのは幹から右手に伸びた大枝である。折れる約1ヶ月前から約1.5mのひび割れが根元部分に有るのが確認されていたが、対策が間に合わなかった。その後、樹医等による調査が行われ、今後、県、町、引作区で対策が協議されるという。(2007年10月18日追記)
 
 今年の連休に南紀方面に出かけたが、引作の大クスがどうなっているのか気がかりだったので立ち寄った。折れた枝の太い部分は、かつて伸展していた真下に横たわっていた(写真3)。折れた部分を見ると、幹との付け根の部分が中空になっていて、その部分が裂け、皮1枚で繋がってはいるが、主枝は枯死してしまったようだ(写真4)。このような中空の状態では、あの重そうな主枝を支えきれなかったに違いない。生育している幹や枝が中空になっているかどうかを外部から正確に診断する技術が無いものであろうか、ご存じの方は教えて欲しい。

 1本の主枝は破損枯死してしまったが、残りの4本の主枝は、みずみずしい若葉をいっぱいに広げて元気そうであった(写真5)。(2008年5月7日に写真を追加)

 今後、御浜町がどのようにするのか見守りたいが、破損部分から幹への腐食が進まないように
手当が必要だろう。また、折れた主枝を撤去する場合には、中空でない部分の主枝の基部を輪切りにして、年輪が数えられるようにして、御浜町の歴史資料として保存し、子供の歴史・自然教育に役立て、また、引作の大クスへの関心と保全活動に役立てて欲しいと思う。この主枝は、数百年以上の年輪が刻まれていることであろうから、年輪学、生気象学(気象・気候と生物との関係を知るための学問)などの観点からも貴重なものであると思われる。(2007年10月18日追記)
 
(写真をクリックすると拡大します)
(写真1)
クスの巨木の太い幹。
この巨木の大きさの測定は、南方熊楠の調査による。幹回りは写真左手の石垣の上から測られているので、実際にはもっと太いことになる。三重県指定の天然記念物である。
(写真2)
大クスの枝ぶりは立派で、四方に伸びている。
(写真3)NEW
大クスの右手に、折れた主枝が横たわっている。枝の先の部分は切断され運び出されている。
(写真4)NEW
主枝の損壊部分。中が空洞化している。
(写真5)NEW
大クスの残りの枝からは若葉が萌え出て、、5月の空を背景に緑が美しい。大クスは元気に生育している。

「紀伊半島の巨木を訪ねる(巨木リスト)」へ
「ホーム」へ